農畜「遊」複合経営とは?

農畜「遊」複合経営とは?

「農畜複合」経営とは、田畑や樹園地で行われる「農業」と(畜舎を含む)放牧地で行われる畜産業を組み合わせ、自然の物質(栄養)循環とが調和する農法(農業技術体系)をベースとして営まれるファーミングシステム(農業経営)を意味しています。

私は長いこと(約30年間)、それがハウス栽培では成立しない!と思い込んでいました。

しかし、ナス科作物で商業規模での連作は不可能と考えられるトマトをハウス栽培で20年間も作り続けながら自然の物質循環と調和し、深刻な連作障害とは無縁の「農畜複合」経営が実在することを知りました(ごく最近!)。

農学知識という思考世界の中に引きこもっていた私は、そこに何か魔法のような技術があるのでは?と考えたわけです。

しかし、ご覧の通り、それが行われている舞台は何の変哲もないビニルハウスの中にありました。

収穫後、パートの方が丁寧に残渣を片付けた後、地元の堆肥センターが製造する有機質肥料(元気くん)を(土の「発酵」を促進する?)土壌微生物の嗜好性が高いエサとして与え、さらにトラクターで耕起する。

その工程自体は、連作が可能とされる他作物や露地栽培で行われる通常の土づくりと同じです。

もし何か秘訣があるというならば、各工程のすべての作業が丁寧に行われている、ということくらいしか私には思い浮かびませんでした。

自分ひとりで考えても到底理解できそうになかったので優秀な学生の力を頼ることになりました。

学生の一人がまだ夏の暑さが残る9月中旬、ハウスの中でトマトの収穫体験に取り組むことになったわけです。

大学に戻った学生と話すうちに、混乱した頭の中で何かがわかったような気がしてきました。

「経営主の家族やそこで働いているパートやアルバイトの方々は、数千株のトマトと根圏に広がる無数の土壌微生物群の生きものが理解できるほど誠実な方たちなのだろう。」

笑い話と受け流していただいて結構ですが、書いている本人は大マジメです。

江戸時代の「農書」を読めばわかっていただけるように、日本型の輪作体系(作りまわし)技術が実践されてきた主な理由は天候不順な飢饉年における農民自身の「飢え」をしのぐためであり、現在のオーガニック農法、自然農、バイオダイナミック農法などのような「自然環境」(または自然循環や自然生態系)との調和がさほど強く意識されていたわけではありません。

自然環境や自然生態系が豊かであった時代、「自然」とは農業生産を制約する大問題であり、その難問の解決法(付き合い方)が追及されていたように思われます。

また、果樹などの永年性作物や水田稲作に目を転じてみれば連作が常識であり、農作物の生育環境を整備(提供)できれば「連作」は決して非常識ではないと考えられます。

あるいは、ナス科作物の「連作」は不可能!とする前提(思い込み)の方が非常識なのかもしれません。

その前提とは、化学肥料や農薬に依存した現代の「慣行農法」に限定した場合にのみ成立しうる命題なのではないでしょうか?

そして、その背景には、短期的収益性を目的とする経済活動に特化した「農業」のあり方や価値観または倫理観などが隠れているのではないでしょうか?

収穫という役目を終え、パートの方が残渣を片付けていたトマトハウスの中でさわった「土」の「さらさら」という手のひらに残る感触は20年間もトマトが連作できた「すごさ」を感じさせてくれるものでした。

最後に、「農」のことばかりで「畜」について説明することを忘れていました。

現代の「畜」には大量の廃棄物を自然生態系に排出する生きもの「ヒト」を含めて考えるべきではないかと思います。

とないえ、自然食品しか食べなかった江戸時代人ならいざ知らず、食品添加物などの不純物を大量に摂取する21世紀人の排出物を農地に施用するのはきわめて危険でしょう。

産地や流通過程で食べられることなく廃棄された食品廃棄物を現代的「畜」(または動物という種類の生命体)を構成する貴重な資材として自然循環過程に組み込むことが「自然」であるように思います。